警察庁の2025年データでは、侵入窃盗47,233件の発生場所別構成比は、一戸建住宅29.1%、共同住宅(3階建以下)5.7%、共同住宅(4階建以上)3.4%でした。
この数字だけを見ると、「戸建ては共同住宅の何倍も危険」と思うかもしれません。しかし、29.1%などの割合は、侵入窃盗全体に占める認知件数の構成比です。戸建てや共同住宅の戸数を分母にした被害率ではありません。
先に結論をいうと、この公表図から「一戸建住宅で認知された件数の構成比が最も大きい」とはいえますが、住居形態ごとの被害確率や危険度の倍率までは計算できません。母数、年度、住宅区分がそろった別データが必要だからです。
この記事では、公的な住居区分、割合の分母、住宅ストックを使って単純計算できない理由を確認し、最後に戸建て・共同住宅それぞれで見るべき点を整理します。
2025年の住居形態別データ|一戸建住宅は侵入窃盗全体の29.1%
警察庁「住まいる防犯110番」は、2025年の侵入窃盗47,233件を発生場所別に示しています。住宅に関係する三つの区分を抜き出すと、次のとおりです。
| 発生場所の区分 | 2025年の構成比 | 公表ページで確認できる件数 | 分母 |
|---|---|---|---|
| 一戸建住宅 | 29.1% | 構成比のみ | 侵入窃盗全体47,233件 |
| 共同住宅(3階建以下) | 5.7% | 構成比のみ | 同上 |
| 共同住宅(4階建以上) | 3.4% | 構成比のみ | 同上 |
| 住宅3区分の合計 | 38.2%※ | 正確な合計件数は算出しない | 同上 |
| 侵入窃盗全体 | 100% | 47,233件 | ― |
※29.1%、5.7%、3.4%という小数第1位までの公表値を当サイトで単純合計した参考値です。警察庁は、構成比を小数第2位で四捨五入しているため、合計が必ずしも100%にならないと注記しています。
三つの構成比から各区分の正確な件数を逆算することはできません。たとえば29.1%は丸められた値なので、47,233件を掛けても推計値にしかならないためです。本記事では正確に公表された全体件数と、図に示された構成比を分けて記載します。[データで見る侵入犯罪の脅威|警察庁「住まいる防犯110番」](確認日:2026年9月9日)
公的な住居区分|「マンション」「アパート」では分かれていない
警察庁の発生場所別データは、住宅を「一戸建住宅」「共同住宅(3階建以下)」「共同住宅(4階建以上)」に分けています。一般に使われるマンション、アパート、分譲、賃貸という名称とは違います。
| 警察庁の区分 | 読み取れる範囲 | この区分だけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 一戸建住宅 | 一戸建てという発生場所 | 所有・賃貸、築年、居住・空き家の状態、地域 |
| 共同住宅(3階建以下) | 建物全体が3階建以下の共同住宅 | 被害住戸が何階か、分譲・賃貸、管理方式、設備状況 |
| 共同住宅(4階建以上) | 建物全体が4階建以上の共同住宅 | 被害住戸が4階以上か、分譲・賃貸、管理方式、設備状況 |
「共同住宅(3階建以下)」は、1~3階の住戸をまとめた表現ではなく、3階建以下の共同住宅という建物区分です。同様に「共同住宅(4階建以上)」を、4階以上の住戸だけの数字と読むことはできません。建物全体が4階建以上なら、低い階の住戸も同じ建物区分に入ります。
したがって、この図から「何階の住戸に何件あったか」は分かりません。また、4階建以上の共同住宅をすべて分譲マンション、3階建以下をすべて賃貸アパートと置き換えることもできません。
割合は何を分母にしているか|住宅だけの内訳ではない
構成比を読むときは、「何件のうちの何%か」を確認します。この図の29.1%は、住宅対象侵入窃盗17,152件のうち29.1%ではありません。住宅以外の発生場所も含む侵入窃盗全体47,233件のうち29.1%です。
図には、一般事務所8.3%、生活環境営業6.7%、商店5.1%、金融機関等0.1%、その他41.6%も含まれます。住宅3区分だけを100%とした円グラフではない点に注意してください。
前の記事E03で解説した「住宅対象侵入窃盗17,152件」は、空き巣、忍込み、居空きという手口区分の合計です。一方、本記事の29.1%、5.7%、3.4%は発生場所区分です。手口で集計した数字と、場所で集計した数字は集計軸が異なります。
住宅3区分の公表割合を足すと38.2%ですが、17,152件を47,233件で割った約36.3%とは一致しません。この差を誤差として埋めたり、どちらかを間違いと扱ったりせず、別の分類による集計として読み分けます。

件数は被害率ではない|構成比・率・確率を分ける
「一戸建住宅29.1%」は、住宅100戸のうち29.1戸が被害に遭ったという意味ではありません。件数、構成比、被害率は、それぞれ分母が違います。
| 指標 | 分子 | 分母 | この資料で分かるか |
|---|---|---|---|
| 認知件数 | 警察が認知した事件の件数 | なし | 侵入窃盗全体47,233件は分かる。住居区分の正確な件数は公表図では不明 |
| 発生場所別構成比 | 各場所での認知件数 | 侵入窃盗全体の認知件数 | 分かる。一戸建住宅29.1%など |
| 住居形態別の被害率 | 各住居形態での対象事件数 | 同じ条件の住宅戸数等 | この公表図だけでは分からない |
| 個々の世帯の被害確率 | 条件をそろえた被害数 | 同条件で観察した世帯・住宅等 | 全国構成比からは分からない |
構成比は、認知された侵入窃盗が「どの場所に分布したか」を見る指標です。被害率は、「その住居形態がどれだけ存在するか」を分母に加えた指標です。戸建てと共同住宅の危険度を比べるなら、本来は後者が必要です。
さらに認知件数は、被害住宅の固有戸数とも一致しません。同じ住宅で複数の事件が認知される可能性があり、警察が把握していない事件も含まれないからです。
母数の問題|2023年の住宅ストックをそのまま割り算に使わない
住宅戸数の公的資料としては、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」があります。2023年10月1日時点で、居住世帯のある住宅は5,566万5千戸。その内訳は一戸建2,931万9千戸、共同住宅2,496万8千戸でした。[令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果|総務省統計局](確認日:2026年9月9日)
一見すると、この住宅戸数を警察庁の認知件数の分母に使えそうです。しかし、本記事では被害率を計算しません。比較条件がそろっていないためです。
| 比較を難しくする要因 | 警察庁の犯罪データ | 総務省の住宅データ | 生じる問題 |
|---|---|---|---|
| 年度 | 2025年の年間認知件数 | 2023年10月1日時点 | 同じ観察年ではない |
| 分類目的 | 犯罪の発生場所 | 住宅・世帯の実態 | 用語が似ていても定義確認が必要 |
| 共同住宅の階数 | 3階建以下/4階建以上 | 概要表は1~2階、3~5階、6~10階など | 3階と4~5階を分離して対応できない |
| 居住状況 | 公表図に対応する居住・空き家別の母数なし | 「居住世帯あり」を集計 | 分子と分母の対象がそろわない |
| 数える単位 | 事件の認知件数 | 住宅戸数 | 複数事件や未認知事件を調整できない |
住宅・土地統計調査は5年ごとの標本調査を基にした推計です。犯罪統計とは調査目的も方法も異なります。異なる年、異なる分類の数値を割って小数点まで示しても、精密な被害率になったとはいえません。
率を計算するには、少なくとも同じ年、同じ地域、同じ住居区分、同じ居住状態をそろえ、分子と分母が何を一件・一戸としているか確認する必要があります。条件をそろえられないときは、計算しないことも正確な情報提供です。
地域・築年・居住状況の影響|全国構成比では切り分けられない
住居形態別の割合には、全国にある住宅の構成そのものが関係します。総務省統計局の2023年調査でも、居住世帯のある住宅に占める一戸建・共同住宅の割合は都道府県によって異なります。そのため、全国の構成比を一つの地域へそのまま当てはめることはできません。
ただし、都道府県別の住宅割合を見ただけで、その地域の治安や個々の住宅の安全性を決めることもできません。犯罪件数、住宅戸数、人口、都市構造などを同じ地域単位でそろえる必要があります。
建築時期についても同様です。築年だけでは、改修履歴、扉や窓の状態、共用部の管理、現在の設備は分かりません。2025年の警察庁の発生場所別図には、築年とのクロス集計がないため、「新しいから安全」「古いから危険」とは判断できません。
居住状況も確認が必要です。普段住んでいる住宅、一時不在、長期不在、空き家では、管理の方法が異なります。しかし、発生場所別構成比だけでは、それぞれの住宅戸数と事件数を対応させられません。
全国統計は大きな分布を知る資料とし、地域や築年、居住状況による違いは、条件のそろった資料がある場合だけ別に検討します。
住まい別の確認点|形態名より、自宅の管理と家族の行動を見る
住居形態の構成比は、対策を考え始めるきっかけになります。ただし、「戸建てだから警備会社」「マンションだから何もしない」と決めるのではなく、自宅の状態を確認します。
| 確認項目 | 戸建てで見ること | 共同住宅で見ること |
|---|---|---|
| 管理範囲 | 自宅の玄関・窓など、管理する出入口を一通り確認 | 共用部と専有部の境界、住戸の玄関・窓を確認 |
| 施錠 | 家族が日常的に施錠でき、故障を放置していないか | オートロックの有無にかかわらず住戸を施錠できているか |
| 家族の行動 | 最後に出る人、子どもの帰宅、長期不在時の手順 | 来訪者対応、子どもの帰宅、共用玄関から住戸までの連絡手順 |
| 工事・設備 | 既存設備の状態と、追加工事の必要性を確認 | 管理規約、賃貸借契約、管理会社・貸主への確認が必要かを見る |
| 異常時の対応 | 通知を見る人と現地対応を頼める先を決める | 管理会社等の範囲と、専有部で家族が担う範囲を分ける |
共通して優先したいのは、すべての出入口が通常どおり閉まり施錠できること、家族で手順を共有すること、異常に気づいた後の連絡先を決めることです。集合住宅のオートロックや管理人、戸建ての塀や門など、一つの設備だけで住戸全体の安全性を判断しないようにします。
確認後に不足があれば、施錠習慣、物理防犯、自己設置型の通知機器、警備会社型などを役割ごとに比較します。日中に通知を見られる人がいるか、現地対応を誰が担うかによって選択肢は変わります。基本対策と家族ルールで対応できると判断し、今回は有料サービスを導入しない選択もあります。
戸建ての条件は[E06 ホームセキュリティを長年利用して感じたこと|便利さと日常の手間]、分譲・賃貸マンションは[R07 マンション向けホームセキュリティ比較|オートロックとの役割の違い]で具体化してください。導入の要否から考えたい場合は、[T02 ホームセキュリティは必要ない?意味がある家庭・ない家庭を条件別に判断]へ進みます。



よくある質問
戸建てはマンションより侵入窃盗に遭いやすいのですか?
2025年の侵入窃盗全体に占める認知件数の構成比は、一戸建住宅29.1%、共同住宅は3階建以下5.7%、4階建以上3.4%です。ただし、これは各住居の戸数を分母にした被害率ではありません。このデータだけで危険度の倍率は判断できません。
一戸建住宅29.1%とは、戸建ての約3割が被害に遭ったという意味ですか?
いいえ。侵入窃盗全体47,233件のうち、発生場所が一戸建住宅だった事件の構成比です。一戸建住宅の総戸数を分母にしていないため、戸建ての約3割が被害に遭ったという意味ではありません。
共同住宅(4階建以上)は、4階以上の住戸だけの数字ですか?
いいえ。建物全体が4階建以上の共同住宅という区分で、被害住戸の階を表していません。公開図から、1階、4階、最上階など住戸の階別件数を読み取ることはできません。
住宅・土地統計調査の戸数で割れば、住居別の被害率を出せますか?
単純には出せません。犯罪データは2025年、住宅ストックは2023年で、共同住宅の階数区分や居住状態も一致しません。分子は事件の認知件数、分母は推計住宅戸数です。同一年・同地域・同定義にそろえられない計算は、個々の家庭の確率として使わないほうが適切です。
まとめ|構成比を見た後は、自宅の条件を確認する
2025年の侵入窃盗47,233件に占める発生場所別構成比は、一戸建住宅29.1%、共同住宅(3階建以下)5.7%、共同住宅(4階建以上)3.4%でした。一戸建住宅の構成比が最も大きいことは確認できます。
一方、この割合は住宅戸数を分母にした被害率ではありません。警察庁と総務省の資料では年度、住居区分、居住状態、数える単位がそろわないため、本記事では住居別の危険度や被害確率を独自計算していません。
全国構成比を契約の答えにせず、出入口の状態、家族の施錠・連絡手順、住まいの管理範囲、異常通知後の対応を確認しましょう。次は[R06 戸建て向けホームセキュリティ比較|共働き家族の選び方と費用]または[R07 マンション向けホームセキュリティ比較|オートロックとの役割の違い]で、自宅の条件に近い判断材料を確認してください。


著者プロフィール
「まもる君のホームセキュリティ見積帳」運営者。47歳、妻と小学生の子ども2人の4人家族です。現在はマンションに住み、過去に戸建てで暮らした経験があります。本人・家族の住居を含め、ホームセキュリティのある暮らしを30年以上経験してきました。
